NHKスペシャル「食の起源」酒の知られざる真実(2020/02/02)

2020-04-14

 こんばんは、管理栄養士のmarinaです。先ほどNHKスペシャルで拝見した番組で、飲酒について報道していたので、簡単にまとめておきます(テーマ名はオリジナルです)。少々、言い回し方や数字の違う所があったらご指摘くださると嬉しいです。
 私はお酒がとっても弱く、いわゆる下戸に分類される人種です。そのため少しでもお酒が飲める人が羨ましいな・・なんて思っています。その反面、自分と相手のテンションがかけ離れてしまう飲み会の場所がとっても苦手ですね。楽しくはありますが・・その理由が本日分かりました(笑)

アルコールの起源

 約1200万年前のアフリカだそうです。森林に暮らしていた祖先(猿?)は、木の上になった実などを摂取していましたが、環境変化で乾燥化が広まった結果、食べられる食料が少なくなりました。木から落ちた果実は、糖分が発酵してアルコール(体内にとっては毒素)になるので祖先は食べることが出来ません。しかし、偶然にも(突然変異で)祖先の中にアルコールを分解する酵素が体内に出来た種類が誕生し、木から落ちた食料を(アルコールを分解することで)食べる事が出来ました。そのアルコール分解酵素を持った種類が増えて、人類の祖先になったようです。

 エチオピア南部では、今でもパルショータ(もろこしから作った酒)から栄養を得ている民族もいるようです。肉や魚などのたんぱく質を食べずとも、栄養を得られているようなので現代の完全栄養食に近いかもしれません。

宴としての役割

 トルコの○○大神殿(ジョベックペペに聞こえたのですが・・調べたら違う様子)では、複数の周辺部族が争う中で大きな神殿を築き上げられていました。ここで重要になったのは、宴(酒)です。周辺部族の結束力を高めるために酒が重要となりました。人間が抱く緊張や警戒心は「理性」があるからですが、酒よって脳の理性の働きが弱められることで、警戒心が解けて気分が開放的になる効用が得られます。この様な働きが、部族間の争いから社会を作る存在になっていったのです。

脳を操る魔力

 脳には異物の侵入を防ぐバリアがありますが、アルコールは分子が小さくバリアをすり抜けてしまいます。脳の内部に侵入すると、ドーパミンが放出されます。ドーパミンで快楽を感じると、飲みたい気持ちが止まらなくなり、更に強い酒を求めるようになります。
 その結果、人間は酒からアルコール分をさらに高めた蒸留酒を作りました。ブランデー、焼酎、ウォッカと言った種類です。これらは快楽をもたらすお酒で、脳をリラックス、人と人を繋ぐ酒になりました。

酒の分解にはある遺伝子が必要

 よく言われていますが、日本人の44%が酒に弱いです(欧米、アフリカ系は0割でこれも衝撃)。何故、一部のアジア人(紹興酒の起源である中国の紹興市も酒に弱いらしい)が酒に弱いのかと言うと、アセトアルデヒド分解遺伝子が背景にあります。

アルコール分解の仕組み

 アルコール → (☆ アルコール脱水素酵素) → アセトアルデヒド
  → (★ 2型アルデヒド脱水素酵素) → 酢酸 → 炭酸ガス、水、熱エネルギー

※ ( )内の脱水素酵素という、分解するための酵素が無いとアルコールは分解できません。日本人は特に、 ★ 2型アルデヒド脱水素酵素 が少ないことが分かっています。

 アセトアルデヒド分解遺伝子が強いと、アセトアルデヒドが体に残りません。アセトアルデヒドは、体にとって毒(発がん性をもたらす等)なので分解しなければいけません。しかし、中国に突如、アセトアルデヒド分解遺伝子が弱い人が出てきました。しかも、これは稲作の広まり方と似ているらしく(稲作は中国の長江流域から始まり東アジア一帯へ)、密接な関係があるとされています。

日本人は、わざわざお酒に弱くなった?

 6000年前の中国では、稲作が始まりました。当時は衛生状態も悪く、病気を引き起こす微生物が体内で繁殖してしまいました。しかし、これには米から作った酒が効果的。体内にとっての毒である「アセトアルデヒド」が体内で繁殖した微生物をやっつける働きがありました。つまり、アセトアルデヒド分解酵素に弱い祖先は、体内でアセトアルデヒドが増えていくため微生物をやっつけるようになったのです。逆に、お酒に強い(アセトアルデヒド分解酵素がある)祖先は、体内の悪い微生物がやっつけられませんでした。

 酒に弱いことで、病気に強くなるとは面白い話です。アセトアルデヒドは体内にとって毒なので、体内に残すとはよっぽどの事があったと推測されます。日本列島でも、元々酒に強かった祖先でしたが環境変化に適応した結果、酒に弱い人種になりました(諸説あるそうですが・・)。

ちなみに現代では

 ちなみに現代では、アルコールのアセトアルデヒドは毒でしかありません。お酒に弱い遺伝子を持つ人が飲酒(どれ位か見えなかった・・・)をすると、頭頚部がん3.6倍、食道がん7.1倍になるとも言われております。
 酒に強い人も、アルコール20g(ビール 500ml)を超えると発がんリスクが高まります。酒に強い人が気を付けるのは、アルコール依存症です。酔いの快楽を断ち切ることができず、体は毒として拒むが、脳は快楽として感じてしまうのです。

新たな開発が進んでいます

 人類はさらに、新たな酒を開発しています。ビールの本場ドイツでは、ノンアルコールビールを積極的に開発しています。いかに、本物の酒そっくりに造るか研究されています。アルコールを含むビールを作って、アルコールだけを蒸発させて取り除くそうです。この時、低い温度で加熱することで味わいが損なわれないとのこと。

 ちなみに、人間はノンアルコールのカクテルでも、酔いの快楽が味わえるようになったようです。ある研究によると、ワインを飲んだ時の楽しさや高揚感が、ノンアルコ―ルでも同じような結果が得られた様です。寧ろ、普通のワインよりもノンアルコールの方がリラックスしていたとか。ビールも同様の結果になるため、アルコールが無くてもほろ酔いと同じような変化があることが分かっています。
 これは、脳に蓄積された飲酒経験の心地よい記憶が、ノンアルコールでも同様の記憶が呼び覚まされて、酔いの快楽が得られるからです。本物と遜色ない味わいがノンアルコールでも疑似体験できるとは人間は面白いですね。

個人的な感想

 酒の起源から知ると面白いなと思う反面、酔うという事はアルコールによって脳が騙されているという認識を持つべきと思いました。理性がなくなる程飲んでしまう人は心配です。人格がなくなってしまえば、家庭や人間関係も社会も崩壊します。タバコで人間関係まで悪化する人は中々聞きませんが、酒は人間を滅ぼします。

 下戸の私が飲み会で楽しめないのは、飲酒によって楽しさや高揚感が得られていないからだと理解しました。おそらく飲酒経験がある方にとっては、ノンアルコールでも心地よいほろ酔いの記憶が引き出されると思いますが、私にはその記憶がありません。悲しい事ではありますが、ノンアルコールを飲んだ所で、ただのジュースにしかならないのです(笑) 一度でいいのでほろ酔い気分、味わってみたい所ですね。美味しくて、低価格なノンアルコール飲料の開発にも期待です。酒の方が安いなんて、酒を減らしたい人にとっても手が出にくいですからね。

 では、この辺で。明日は久しぶりにYoutube でLive配信します( ˘ω˘ )

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